導入

コードレス掃除機について、売り場でよく聞かれる質問があります。
こうした疑問の多くは、
**掃除機の『構造』や『設計思想』**を知らない事から生まれています。
実は、掃除機は、メーカーによって目指している方向が全く違います。
例えば、
同じコードレス掃除機でも、思想そのものが違う機械なのです。
この記事では、家電量販店の販売現場での経験を元に、
を、掃除機の仕組みから解説します。
この記事を読む事で、
“なぜ、掃除機によって吸い込みの差が生まれるのか?”
その理由が、構造レベルで理解できるはずです。
⸻
なお、軽い掃除機と吸引力の関係については、こちらの記事でも解説しています。
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『強モードが5〜8分で終わる…』コードレス掃除機の落とし穴

売り場でよくある質問が、
「強運転にするとすぐ止まる」
というものです。
これは故障ではなく、コードレス掃除機の設計によるものです。
多くのコードレス掃除機は、標準モードで日常掃除を行う設計になっています。
そのため、
という仕様になっています。
強モードは、
などで短時間使うブースト機能です。
強モードを常用すると起こる事
強モードを長時間使うと、
が大きくなります。
モーターが高温になると、内部の空気も加熱されます。
加熱された空気は膨張するため、掃除機内部では空気圧が高まりやすくなります。
そのため、強モードは、
短時間使用のブースト機能
として設計されています。
強モードばかり使うとバッテリー寿命が短くなる
もう一つ重要なのが、
バッテリー寿命
です。
コードレス掃除機に使われているリチウムイオン電池は、充放電回数によって劣化
します。
これは故障ではなく『消耗』。
リチウムイオン電池による仕様の限界で、充放電できる限度があるためです。
販売現場ではよく、
「標準モードで毎日使うと、バッテリーは約3年前後」
と説明される事が多いです。
しかし、これは、標準モード前提の話です。
仮に、強モードばかり使うと、
ため、

「1年くらいでバッテリーが短くなった!」
というケースも珍しくありません。
しかし、これはこれは故障ではなく、強モードを前提に使ってしまった結果と言えます。
なぜ、ダイソンは標準モード(機種によっては「エコ」や「AUTO」と呼ばれる)でも吸うのか?
ここまで説明したように、
コードレス掃除機は、標準モードで掃除する設計
になっています。
つまり、コードレス掃除機選びで重要なのは、標準モードの吸引力です。
ここで、メーカーによって差が大きく出ます。
ダイソンの掃除機は、多層式サイクロン構造によってゴミを分離
します。
ダイソン以外のメーカーも遠心分離は使っていますが、多くの機種では、“微細なゴミはフィルターに頼る” 構造になっています。
一方、ダイソンは微細なゴミも遠心力で分離するため、
という特徴があります。
ここの話をまとめると、
ダイソン以外のメーカーも、大きなゴミは遠心力で分離する構造は共通
↓
しかし、多くの機種では、微細な粉塵はフィルターに頼って捕集しているのが実情
【主な形状】
ジャバラ状(採用例:日本メーカー)
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プリーツ状(採用例:Shark)
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一方、ダイソンは、微細なゴミも遠心分離を利用してゴミを分離するため、フィルターに頼らない。
その結果、目詰まりするものがなく吸引力を維持しやすい構造になっています。
(Root Cyclone™テクノロジー)
ダイソンは、円錐形の小さなサイクロンを多数搭載する事で、強力な遠心力を発生させ、微細なゴミまで効率よく空気から分離。
これにより、フィルターの目詰まりを防ぎ、長期間吸引力が落ちない仕組みを実現。
⸻
⸻
他社の微細なゴミをフィルターで取り除く『フィルター式サイクロン掃除機』に比べると、微細なゴミを分離する能力が非常に高い優れた『ダイソン式サイクロン』です。
つまり、
そのため販売現場でも、

「強運転ばかり使わなくても、標準モードで十分吸います」
と説明される事が多いのです。
ではここで、もう一つ疑問が出てきます。
「そもそも、なぜメーカーは強モードを長く使えるようにしないのか?」
実はこれには、単なるバッテリー容量だけではない、掃除機の設計思想が関係しています。
なぜ、そもそもメーカーは「強モードを長くしない」のか?
コードレス掃除機の強モードは、ほとんどの機種で、
約5〜8分
程度しか使えません。
これは、バッテリー性能の問題だけではなく、掃除機の設計思想によるものです。
理由は大きく3つあります。
① バッテリーのサイズ制限
コードレス掃除機は、
軽さ
が非常に重要な商品です。
もし、強モードを20〜30分使えるようにしようとすると、バッテリー容量を大きくする必要があります。
しかし、バッテリーを大きくすると、
という問題が発生します。
そのため、メーカーは、
標準モードを長時間使える設計
(機種によっては「エコ」や「AUTO」と呼ばれる)
にしています。
② モーターの発熱問題
掃除機のモーターは、出力を上げる程、
発熱
します。
強モードを長時間使うと、
が高くなります。
モーターが高熱を持つと、モーター付近の空気も加熱されます。
加熱された空気は膨張するため、内部空気の圧力が高まりやすくなります。
そのため、強モードは、
短時間使用のブースト機能
の位置づけとして設計されています。
③ 家庭掃除の実態
もう一つの理由が、
掃除時間の現実
です。
メーカーの調査では、
家庭の掃除は、1回10〜15分程度
が多いとされています。
つまり、メーカーとしては、
という使い方が最も合理的と考えています。
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コードレス掃除機の選び方(家電販売員の視点)

コードレス掃除機を選ぶ時は、次のポイントを見ると失敗しにくくなります。
家電量販店の販売現場でも、実際にこの順番で説明される事が多いです。
① モーター性能
まず最も重要なのは、モーター性能です。
掃除機の吸引力は、基本的にモーター性能で決まります。
特に、コードレス掃除機では、主要素として、
- モーター性能
→回転数やサイズなど “吸うためのパワー” - バッテリー電圧
→モーター回転数は供給電圧に比例 - 気流設計
→空気の通り道(ダクト,サイクロン配置など) - ゴミ分離構造
→サイクロン/紙パック(吸引力持続に影響) - ヘッド密閉性
→実際の吸引効率
など、これらの要素が組み合わさって、コードレス掃除機の吸引性能が決まります。
そのため、販売現場では、
「軽い掃除機=吸わない」
と言われる事もあります。
軽さを優先すればする程、
が小さくなるためです。
しかし、このモーター性能を見極める上で幾つか問題点があります。
なぜ、『モーター回転数』は吸引力の指標にならないか?
回転数は、吸引力を直接示す数値ではないからです。
掃除機の吸引力は、先述の通り、
モーター性能×気流設計×ゴミ分離構造×ヘッド密閉性×バッテリー電圧
で、実質決まります。
しかし、モーター回転数は、モーター性能の一要素に過ぎません。
つまり、回転数だけでは性能は決まらないという事です。
メーカーは、コードレス掃除機の明確な数値を出さない
キャニスター掃除機では、吸込仕事率(W)という指標を採用しています。
しかし、コードレス掃除機では、
ので、意味が薄くなります。
だから、今は、コードレス掃除機での明確な吸引力における共通指標がない状態です。
では、現場では、どこを見るのか?
実際の販売現場では全てを細かく比較する事はできません。
そのため、実際のコードレス掃除機の販売現場では、次のポイントを見る事が多いです。
この3つを見る事で、掃除機の性能の方向性がかなり分かります。
つまり、
カタログの数値ではなく、
掃除機の構造そのもの
を見る事が重要になります。
なぜ、ダイソンだけ『モーター回転数』を公開するのか?
ここまで説明したように、
現在のコードレス掃除機には、吸引力を比較できる共通指標がありません。
そのため、多くのメーカーは、吸引力を示す数値を敢えて公開していません。
では、なぜ、ダイソンだけカタログなどで
「モーター回転数(例:毎分最大125,000回転)」
を公開しているのでしょうか。
理由はシンプルで、モーター技術そのものが、ダイソンの強みだからです。
ダイソンは、創業当初から、
といった『空気を動かす技術』に強みを持っています。
そのため、モーター回転数の公開は、「吸引力の数値」というよりも、
モーター技術の高さを示す指標として使われているのです。
もちろん、回転数だけで、掃除機の吸引力が決まるわけではありません。
しかし、
を作れる事は、コードレス掃除機において非常に重要な技術の一つです。
そのため、
ダイソンは、自社の技術力を示す意味でモーター回転数を公開している
と考えられます。
② ゴミ分離構造(サイクロン / 紙パック)
掃除機の吸引力を考える上で、もう一つ重要なのが、ゴミと空気の分離構造です。
掃除機は大別すると、
の2つがあります。
一見すると、『ゴミを溜める方法の違い』に見えますが、実際には、吸引効率にも大きく影響します。
紙パックは「分厚いマスク」
紙パック式の掃除機は、空気を紙パックの繊維に通してゴミを捕まえます。
つまり、
空気は、紙のフィルターを通過する必要があります。
これは、イメージとしては
掃除機に、マスクをつけて呼吸させている状態
です。
紙パックが新しい間は問題ありませんが、ゴミが溜まってくると、
という状態になります。
特に、コードレス掃除機では、バッテリーという限られたパワーで動いているため、この空気抵抗の影響を受けやすくなります。
サイクロンは、遠心力でゴミを分離する
一方、サイクロン掃除機は、遠心力を使ってゴミを分離します。
空気を高速で回転させ、
を外側に飛ばして分離する仕組みです。
そのため、基本的には、空気がフィルターを通過しなくてもゴミを分離できる構造になっています。
つまり、空気の流れを邪魔しにくいという特徴があります。
コードレス掃除機では、この論点は特に重要
コンセント式(100V)の掃除機であれば、
多少、空気抵抗があってもモーターのパワーで押し切る
事ができます。
しかし、コードレス掃除機は、限られたバッテリー出力で動いています。
そのため、
は、吸引効率に大きく影響します。
③ モーターヘッド構造(自走ヘッド/ 非自走ヘッド)
もう一つ見逃されがちなのが、ヘッド構造です。
掃除機のヘッドには、
があります。
自走ヘッドのメリット
自走ヘッドは、ヘッド内部のモーターで回転ブラシを動かす事で前に進む力を生みます。
そのため、操作感としては、
という特徴があります。
販売現場では、この感覚を
電動自転車
に例える事があります。
例えば、普通の自転車でも前に進む事はできますが、電動アシスト自転車に乗るとペダルをこぐ力がかなり軽く感じます。
自走ヘッドもそれと似ていて、
ブラシの回転が、前に進む力をアシストしている状態です。
そのため、実際の重さよりも軽く動くように感じるのです。
日本メーカーの掃除機では、この自走ヘッドが多く採用されています。
(特に顕著なのは、日立)
しかし、床との密閉性は弱くなる
ただし、自走ヘッドには、一つトレードオフがあります。(得るものがあれば、犠牲にするものもある)
それが、
床との密閉性
です。
ヘッドが軽く動くようにするためには、床との間にある程度の隙間が必要になります。
この隙間から空気が逃げるため、吸引効率が下がる場合があります。
例えるなら「ほうき」と「雑巾」
この違いは、掃除のイメージで考えると分かりやすいです。
つまり、『軽さ』と『吸引効率』はトレードオフの関係です。
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なぜ、販売員はダイソン掃除機を薦めるのか?

家電量販店の掃除機売り場では、多くの販売員がダイソンをお薦めする場面があります。
それは、単に「有名だから」ではありません。
理由はシンプルで、
掃除機としての基本設計が合理的
だからです。
実際の掃除機の性能は、
- モーター性能
→回転数やサイズなど “吸うためのパワー” - バッテリー電圧
→モーター回転数は供給電圧に比例 - 気流設計
→空気の通り道(ダクト,サイクロン配置など) - ゴミ分離構造
→サイクロン/紙パック(吸引力持続に影響) - ヘッド密閉性
→実際の吸引効率
など、これらの要素が組み合わさって、コードレス掃除機の吸引性能が決まります。
そして、ダイソンは、この5つを最初から一体設計しています。
① 標準モード(機種によっては「エコ」や「AUTO」と呼ばれる)でも掃除できる設計
多くのコードレス掃除機は、
という設計になっています。
しかし、強モードは、
の問題があるため、長時間使う事は想定されていません。
一方、ダイソンは、
標準モードでも、しっかり掃除できる吸引力を前提に設計
(機種によっては「エコ」や「AUTO」と呼ばれる)
されています。
そのため販売現場でも、

「基本は、標準モードで十分吸います」(=「強を使わなくて大丈夫です」)
と説明される事が多いのです。
② ダイソン式サイクロンで、吸引力が落ちにくい
多くの掃除機は、
微細な粉塵は、フィルターにゴミが溜まる構造
になっています。
そのため、使用していくと、
目詰まり → 吸引力低下
が起こります。
一方、ダイソンは、
微細な粉塵も、遠心力でゴミを分離する多層式サイクロン
を採用しています。
これにより、
という特徴があります。
③ 床とヘッドの密閉性が高い
掃除機は、空気を吸う力だけではなく、床との密閉性も非常に重要です。
ヘッドと床の間に隙間があると、空気が逃げてしまい吸引効率が大きく落ちます!
ダイソンのヘッドは床との密閉性が高く、空気の流れを逃さない設計になっています。
そのため、販売現場では「重い」と感じる人もいますが、これは、床に密着している証拠でもあります。
④ 設計思想が「掃除機中心」
これは少しマニアックな話ですが、掃除機にはメーカーごとに設計思想があります。
例えば、
などです。
その中で、ダイソンは、
掃除機としての性能を最優先に設計
されています。
つまり、
という構造が一貫して作られています。
まとめ|販売員が、ダイソンを薦める理由はブランドではなく設計思想
販売員が、ダイソンを薦める理由はブランドではなく設計思想です。
掃除機は、
- モーター性能
→回転数やサイズなど “吸うためのパワー” - バッテリー電圧
→モーター回転数は供給電圧に比例 - 気流設計
→空気の通り道(ダクト,サイクロン配置など) - ゴミ分離構造
→サイクロン/紙パック(吸引力持続に影響) - ヘッド密閉性
→実際の吸引効率
など、これらの要素が組み合わさって、コードレス掃除機の吸引性能が決まります。
そして、この5つを最も合理的に設計しているのがダイソンなのです。
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なぜ、シャークは売れているのに販売員は選ばないのか?

近年、コードレス掃除機の人気機種として必ず名前が挙がるメーカーがあります。
それがシャーク(Shark) です。
売り場でも、
といった理由で、多くの人が興味を持つ製品です。
しかし、販売現場では、
シャークを第一候補にする販売員は多くありません!
(※ただし、売り場にはメーカー販促や店舗事情もあるため、実際の販売傾向とは必ずしも一致しない場合があります。)
これは、ブランドの問題ではなく、掃除機の構造の違いによるものです。
シャークの掃除機は「大風量型」
掃除機の設計思想には大きく2つあります。
| メーカー | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|
| ダイソン | 高圧・密閉型 | 強い吸引力でゴミを引き抜く |
| シャーク(Shark) | 大風量型 | 空気量でゴミを運ぶ |
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シャークは、後者の「大風量型」の設計です。
空気の流れをできるだけストレートにし、ブラシの回転でゴミを叩き出しながら効率よくゴミを運ぶという思想です。
そのため、
などの掃除は非常に得意です。
しかし、フィルター構造には弱点がある
シャークの多くのモデルは、
円筒形のプリーツフィルターを採用
しています。
これは、360度から空気を吸い込む構造です。
一見、効率が良さそうですが、この構造には一つ問題があります。
それは、
粉塵の逃げ場が少ない
という点です。
例えば、日立などの日本メーカーの板状フィルターは、『面』で空気を受ける構造なので、振動や軽い衝撃で粉塵が落ちる余地があります。
そのため、平らな硬い床や地面などに叩きつける事で、粉塵を叩き出すパワープレイのメンテナンスが可能です。
しかし、シャークの場合、
プリーツが深く、密度も高いため、微細な粉塵が入り込むと内部にパッキングされやすい構造
になっています。
この状態で、

「2ヶ月に1回くらい水洗いしてください」
といったメンテナンスを行うと、逆に問題が起きる事があります。
日本の住宅環境では、
などが混ざった粉塵が多く、これが水と混ざると、粘り気のある泥のような状態になることがあります。
これを『湖化』(こか)と言います。
そのため、
シャワーなどで表面にシャーッと水をかける,軽く洗っただけでは、汚れを流すというより、プリーツの奥に押し込み、湿らせてしまうケースも少なくありません。
更に、プリーツの奥は乾きにくく、湿った埃が乾燥する過程で粉塵同士が密着し、バリバリに固まる(コンクリート化)のような状態になる事があります。
こうなると、
空気の通り道が塞がれてしまい、吸引性能が大きく低下
します。
つまり、
シャークのプリーツフィルターは、構造上メンテナンスが少し難しい
という特徴があります。
一方で、シャークのフィルターは、比較的安価に販売されています。
そのため設計思想としては、
フィルターを洗って長く使うというより、消耗品として定期的に交換する
という考え方に近い可能性があります。
つまり、シャークの掃除機は、
空気の流れを効率よく作りながら、フィルターで粉塵を受け止める、
いわば、
「フィルターで吸う掃除機」という設計思想(フィルター依存型)
とも言えます。
なぜ、シャークは低電圧でも吸えるのか?
シャーク掃除機は、ダイソンのように、「高電圧で真空圧を高める設計」ではありません。
代わりに採用しているのが、
「大風量でゴミを運ぶ設計」
です。
つまり、
強い“吸引圧”で引き抜くのではなく、大量の空気を流し、ゴミを運ぶ事で回収する仕組み
です。
これは、イメージとしては、
という違いに近いです。
そのため、シャークは、比較的低い電圧でも、
という方法で、フローリングの表面ゴミを効率よく回収する事ができます。
つまり、シャークは、
「高圧吸引」ではなく、**「高効率の風量」で掃除する掃除機**
という設計思想です。
『自動ゴミ収集ドック』が生む誤解
シャークの大きな特徴として、
自動ゴミ収集ドック
があります。
Shark公式サイト
これは、一見すると、確かに便利な機能です。
しかし、ここで一つ重大な誤解が生まれます。
ドックが吸い出すのは、ダストカップ内の大きなゴミ
だけです。
フィルターの奥に詰まった微細な粉塵までは取り除いてくれません!
そのため、「ゴミを捨てなくていい」という安心感から、フィルターの状態が放置されやすくなる傾向があります。
CMでは、フィルターの話まで触れないので、店頭でちゃんとお伝えすると、印象が大きく変わるお客様が少なくありません。
「シャークが止まる」と言われる理由
シャークの掃除機について検索すると、
「シャーク 止まる」
というワードを見かける事があります。
これは、必ずしも故障とは限りません。
多くの場合、原因はフィルターの目詰まり
です。
掃除機のモーターは、吸い込んだ空気で冷却されています。
しかし、フィルターが詰まると、空気の流れが悪くなり、
という状態になります。
その結果、
モーター保護のための安全装置が働き、掃除機が停止
する事があります。
つまり
「壊れた」のではなく、**モーターを守るために止まっている**ケースが多いのです。
この現象は、シャークの掃除機が、
フィルターに大きく依存する構造である事とも関係
しています。
フィルターの状態が悪くなると、空気の流れそのものが弱くなり、掃除機の性能にも大きく影響します。
ダイソンとシャークの掃除思想の違い
コードレス掃除機を語る上で外せないのが、
ダイソンとシャークの設計思想の違いです。
どちらも高性能な掃除機ですが、実は、アプローチはまったく異なります。
簡単に言えば、
という違いがあります。
ダイソン|『高圧・完全密閉』流派
ダイソンの掃除機は、強い吸引圧でゴミを “引き抜く” 事を重視した設計です。
そのために採用しているのが、
といった仕組みです。
空気の通り道をしっかり密閉し、内部で強い負圧(真空に近い状態)を作る事で、カーペットの奥のホコリや微細な粉塵まで引き抜く事ができます。

体に近い本体の先端に、空気清浄レベルの排気フィルターを設けており、フィルターの目がめちゃくちゃ細かいので、高電圧でグイグイと押し込まないと空気が出ないんです。
その代わり、ダイソン掃除機からの排気はその時の部屋の空気より
きれいで部屋を汚しません!
ダイソンは、掃除機の形をした『自走する空気清浄機』であると言えます。
したがって、イメージとしては、
『高圧ポンプでゴミを吸い上げる掃除機』
と言えるでしょう。
そのためダイソンは、
といった、床の奥に入り込んだゴミの回収に強い特徴があります。
シャーク|『大風量・効率』流派
一方で、シャークの掃除機は、ダイソンのような『高圧吸引』を重視した設計ではありません。
代わりに採用しているのが、
空気の流れを最大化する『大風量型』のアプローチ
です。
空気の通り道をシンプルにし、効率よく空気を流す事で、ゴミを吸い込むというよりも、“風で運ぶ” という考え方に近い構造です。
これはイメージとしては、
のような関係です。

言い換えれば、風の流れが良いのは『空気を遮るものが少ない』から。
微細な粉塵までキャッチする『目の細かさ』や『密閉性』をある程度、トレードオフ(=設計バランス)の関係にあると言えます。
更に、シャークは、
という仕組みで、
フローリング表面のゴミや髪の毛などをスピーディーに回収する事を得意としています。
日本メーカー|『使いやすさ重視』流派
他方、日本メーカーの掃除機は、ダイソンやシャークとは少し異なる方向で進化してきました。
その背景にあるのが、日本特有の市場環境です。
日本では、
といった生活環境の変化が進んでいます。
そのため、日本メーカーの掃除機は、掃除機としての性能だけでなく、
といった「使いやすさ」を非常に重視した設計になっています。
掃除機を手に取った瞬間に、
「軽っ!」
と感じるような体感的な負担の少なさも、こうした市場環境を強く意識した結果と言えるでしょう。
例えるなら、
せっかく、大排気量のエンジンを積んでいるのに、安全性や乗り心地を優先してアクセルを抑えた高級車のような設計
とも言えます。
一方で、ダイソンやシャークは海外メーカーのため、日本の高齢化や単身世帯の増加といった市場事情よりも、
“掃除機とはどうあるべきか”
という設計思想を優先している傾向があります。
その結果、
使いやすさを最優先した日本メーカーの掃除機と、吸引性能を重視した海外メーカーの掃除機では、実際に使った時に吸い込みの力の違いを感じる場面も少なくありません。
コードレス掃除機は、結局、どれを選ぶべき?|タイプ別おすすめ
ここまで、コードレス掃除機の構造やメーカーごとの設計思想を見てきました。
では、実際に、どの掃除機を選べば良いのでしょうか。
掃除機選びは、
“どのゴミを取りたいか?”
で考えると分かりやすくなります。
■カーペットの奥のホコリや微細な粉塵まで取りたい
→ ダイソン|【吸引性能 > 操作性】
高電圧モーターと高い気密性で強い負圧を作り出し、奥に入り込んだホコリまで引き抜く設計です。
更に、
⸻

高電圧モーターと高い気密性で強い負圧を作り出し、奥に入り込んだホコリまで引き抜く設計。
これは、もはや、掃除機というより、「空気清浄機のような密閉構造」に近い設計思想です。
⸻
■フローリング中心で効率よく掃除したい
→ シャーク|【効率 > 密閉】
ブラシでゴミを叩いて舞い上げ、大風量で一気に運ぶ構造のため、日常掃除をスピーディーに行えます。
⸻
■軽さや取り回しの良さを重視したい
→ 日本メーカー|【操作性 > 吸引性能】
軽量設計や自走ヘッドなど、使いやすさを重視した設計で『吸引性能<体への負担軽減』を重視する方。
そのため、
⸻
まとめ|コードレス掃除機は「軽いから吸わない」のではない

「軽い掃除機は吸わない」
と言われる事があります。
しかし、実際には、掃除機の性能は、
- モーター性能
→回転数やサイズなど “吸うためのパワー” - バッテリー電圧
→モーター回転数は供給電圧に比例 - 気流設計
→空気の通り道(ダクト,サイクロン配置など) - ゴミ分離構造
→サイクロン/紙パック(吸引力持続に影響) - ヘッド密閉性
→実際の吸引効率
など、これらの要素が組み合わさって、コードレス掃除機の吸引性能が決まります。
つまり、軽い掃除機が吸わないのではなく、
**「軽さばかりを優先した設計」では吸引効率に限界が生まれる**
という事です。
掃除機の設計思想を大きく分けると、
という方向性の違いがあります。
もちろん、それぞれに良さがありますが、
実際に使った時に吸い込みの力の違いを感じるのは、こうした設計思想の違いによるものです。
掃除機の性能は、空気をどう動かすかという“設計思想”で決まります。
掃除機選びで大切なのは、印象や売れ筋だけではなく、
**その掃除機が “何を優先して設計されているのか?” **
を理解する事です。
是非、自分の生活環境に合った掃除機を選んでみてください。
関連記事(順次追加予定)
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【この記事を書いた人】
ワタル
家電量販店で掃除機・空調家電を担当。
家電製品アドバイザー「エグゼクティブ等級」プラチナグレード保有。
家電量販店での販売経験およそ20年。
内、ダイソン製品販売経験7年。
6年に及ぶ空調家電の販売経験を経て、
2025年から掃除機担当に転身。
空調家電で培った「空気の流れ」や「構造理解」の
視点を掃除機に応用し、
・吸引性能
・フィルター設計
・空気の流れ
・メーカーごとの設計思想
など、
カタログでは分からない掃除機の構造や性能差を、
実際の販売現場の視点から解説しています。
掃除機は「家電」というより、
空気をコントロールする機械
だと考えています。




